2011
室井亜砂二氏

小さいころの目の大きな少女の塗り絵や、夢二のイラストのような懐かしさがある室井亜砂二氏の原画を観に、下板橋にある百日紅カフェに行って来ました。4時頃に室井先生がいらっしゃって、絵を観に来た人たちみんなで、一つのテーブルに集まって、あれこれお話をいたしました。何十年も前からずっと、室井先生の絵のファンだった方がいらしてて、お気に入りの絵を色々と紹介して頂きました。
先生の絵を見ていると、貸本屋の裏道で、人さらいに捕まってしまったような気分になります。どこか物悲しくて、寂しく哀れです。犬や馬が一生懸命に見上げてくる瞳を覗き込んでいる時に、感じる愛しさ哀しさのような気持ちです。
相手を犬や馬や豚や猫に見立てるというプレイはどの国にも昔からあるのですが、日本ではなぜか、女性は犬に見立てることが多いのです。見立てられる側も、犬は受け入れやすい。どんな事があっても、一途に主人を思う気持ちが犬には現れているからでしょうか。犬を飼った方はお分かりでしょうが、人間がこんなに自分を慕ってくれることはあるまいな・・・と、思ってしまうくらいに、犬は、与えた愛情を、必ず返してくれる生き物です。しかも、構ってやれない状況になったとしても、けっして愛情を忘れてしまうことはありません。
先生の絵で重要なファクターは縁側だそうです。部屋の中に服を着て、居心地よく、暖かくしている人間と、庭先に裸で繋がれて(犬なら当たり前なのですがw)地面の上に座っている犬とを明確に分ける線。そして、それが交わるグレーゾーンである縁側。
主と女犬の立場を2つに分ける境界線。
今では縁側のある家も少なくなり、犬を外で飼うということも減って来ました。繋がれている犬ではなく、自由に家の中で過ごす飼い犬たち。それは、もう、もの寂しくも哀れでもありません。
室井先生の静かな言葉が耳に残っています。「僕は、Sではないかもしれない。痛くするのを見ていると、かわいそうでならない。」ややや、痛くしなくても、先生の絵の中の女性は、いつもどこかかわいそうなのであります。

場所:カフェ「百日紅」
東京都板橋区板橋1-8-7小森ビル101 Tel: 03-3964-7547
期間:前期=2011/9/15(木)~9/26(月)
後期=9/29(木)~10/10(月)
営業時間:14:00~23:00 定休日:(火)(水)


現在の先生は、Webスナイパーの「あぶらいふ」の扉絵を毎月連載されています。一枚の絵からひとつの物語がいくつもいくつも産まれてきそうな、その絵をみなさんもご覧になってくださいね。私のお気に入りは・・・・・・。
