2015

05.06

お仕置き(凛編)・2

始めから読む

第二章『凛のメール・2』

『冷たい空気が頬に痛い冬、晴れ渡って雲一つ無い空が好きです。お仕置きで腫れ上がったお尻もその冷たさで冷やしてくれたらいいのに。
 先日、柊二さんにも話していた、ホテルでの16歳の誕生日のディナー。とっても楽しみにしていたのですが、当日になって父に、もう一人女性を一緒に招待していることを教えられました。いつものように、二人だけのお祝いと思っていた私は、本当にショックです。
 母が死んでから五年。父もまだ若いのだし、付き合っている女性がいても不思議ではなかったのだけど、そんなことは全く考えもしてませんでした。 
 その女性は、美智子さんと言って、父よりも15歳も若くて、商社で秘書をしているという話でした。ほっそりとした身体にシンプルな黒いワンピースとハイヒール。赤い口紅を引いて、胸元には、光るダイヤモンドのペンダント。都会的な美人っていうのにふさわしい咲き誇る薔薇のような人でした。どちらかと言えば華奢で、ふわふわとしたお嬢さん臭さが抜けなかった母とは、ぜんぜん違うタイプです。
 でも、わざわざ紹介するくらいなのだから、もしかしたら、父はその人と結婚する事を考えているのかもしれません。忙しくて、始終家を留守にしている父なのだけど、どこかしら、自分だけのもののように思っていた私は、父にも私の知らないプライベートな時間があるのだということが、受け入れられませんでした。
 そうだとしても、愛する父親が幸せになるのは、祝福しないといけないですよね・・・。これから、時々、家にも遊びに来ると言っていたので、努力して仲良くなって行くつもりです私は人見知りをする質なので、うまくいくかどうか不安なのですが。
 それから・・・』
  そこまで書いて、私は言葉に詰まってしまった。いい子ぶっている自分の言葉に、自己嫌悪を感じた私はそのメールを保存せずにそのまま消してしまった。立ち上がって、ベッドの上に身体を投げ出す。お尻がひりひりと痛んで、長い時間座ることができないのだ。それは、お仕置きを受けた時の打撲の痛みとは違って、焼けつくような熱さと痛みが混然としたひりつきで、一瞬も私にその事を忘れさせてくれない。
  あのディナーの夜、父を奪われたような哀しさとショックは、深く、深く私の心を引き裂いた。こわばった頬でうまく微笑むことも出来ず、涙で潤む目を見られまいと、食事の間ほとんど喋らずずっと俯いていた。そして感情を隠そうとするあまりに、食事が終わった後も、そっけない挨拶しかできずに、女性を送っていくという父に背を向けてそそくさとタクシーで帰ってしまったのだ。
 そんな子供っぽい態度は当然父に許されるはずもなく、その夜遅く帰ってきた父 は、もう部屋にさがっていた私の部屋にわざわざやってきた。そして、私を膝に抱え上げるとパジャマのズボンを引き下げて、厳しい声で説教を始めたのだ。自分の態度が、お祝いを言うために来てくれた彼女に対して、言い訳の出来ない失礼な振る舞いだったことは、社交の常識を持ちだされなくても分かってはいたのだけれど。それでも・・・。それでも、傷つけられた娘の気持ちをもっと案じてくれてもいいのではないかと今でも思ってしまう。
 父が、私が考えている事。感じている事を察してくれなかった事も、衝撃だった。私は素直に謝れず、父からたっぷりとお仕置きをされてしまったのである。思い出しただけで、また、瞼に涙が溢れてくる。
 心から反省して謝った時、お仕置きはちっとも辛くなく、終わった後は、 心置きなく父親の膝に甘えられたのに、その夜は違った。無理矢理押し出した謝罪の言葉は、私の胸を重く塞ぎ、打たれた身体よりも辱められたプライドがずっと強く傷んだ。私よりもあの人の肩をもつの?私よりもあの人のほうが大事なの?私は、何度も心の中で繰り返し、会ったばかりの他人のために、お尻をむき出しにされる屈辱に震えた。

 それだけではなかった。翌日、学校で学期始めの身体検査があって、泣きながら眠れない夜を過ごした私は、自分の悲しみにかまけていて、ついうっかりと、お仕置きされた赤い掌の後を保健の先生に見咎められてしまったのだ。そのために、自分から、保健の先生にお尻をまくって見せなくてはならなかった。
 子供の頃ならいざしらず、明らかにお尻を叩かれた掌の痕をつけたお尻を、他人の目に晒さなくてはいけない恥ずかしさは、物凄く強くて、私は、度重なる屈辱に、足が震えた。父にお尻を叩かれるなんて、なんでもないふりをする事だけが、私に残された選択肢だった。

  そして、先生が塗ってくれた薬。早く治ると言われたのだけど、冷たい手で先生がお尻に薬を塗り広げ始めた時は、あまりの熱い痛みに私は叫び声を押さえるのがやっとのありさまだった。かっと全身に汗が噴き出してくる。拳を握りしめて身体を硬直させる。痛い。私が顔を歪め、先生の手の下から逃れようとお尻をくねらせると、先生は腰の所を強い力で押さえつけ、タップリとまんべんなくそのお尻の丸みにそってその薬を塗り広げた。
「来週の土曜日も検査しますから、早めに登校するように」
 追い打ちをかけるような先生の言葉に私は、頷くしか術がなかった。その時、確かに私は見てしまった。先生の頬にちらっと見えた、意地悪をした後の喜びの表情を・・・。キラキラと光る瞳は興味津々の気持ちを隠してはいなかった。
  その後の授業は、地獄のようだった。放課後に来るように言われていたのに、後ろめたさに授業が終わるまで待つことが出来なかった私は、そのつけを焼けるようなお尻の痛みで払わなければいけなかったのだ。椅子の上に座ると沁み入るような痛みが焼けるように強くなり、私は、膝に力を込めてお尻を椅子に押し付けないように腰を浮かせてその午後を過ごした。けれど、それもやっぱり限界がある。酷使した太腿や膝やふくらはぎは段々と持ちこたえられなくなり、震えだす。思わずお尻を落としてしまい、そして、また跳ね上がるといった、教師の目から見ればいささか不自然な動きを繰り返してしまう。
 こんなに大きくなって、父親のお膝の上でお仕置きを受けているなんて、他の人に知られたくない。でも、こんなことをしていたら、すぐにバレてしまいそうである。
  八方塞がりの状態が、終礼で終わりを告げた時、私は安堵のあまりに、泣きそうになった。挨拶も、そこそこに、迎えの車に乗って、後部座席では横向きにうつ伏せになり、家に帰り、服を脱ぐのももどかしく、浴室に湯をはった。とにかく塗られた薬を洗い流してしまおうと思ったのだ。
 お風呂は程よい湯加 減に暖められていた。そして、一杯目のかかり湯を肩先から被った私は、悲鳴をあげて立ち上がった。ただでさえ我慢ができなかった、私のお尻は、焼けるようだった。お湯が激しく沁みるのだ。でも、よく石鹸を付けて洗えば、何度もかかり湯をして流せば・・・。だが、その薬はそんな甘いものではなかったのである。あたたまり、赤く腫れ上がったお尻は、血行がよくなったせいで泣きたいほどの痛さがじんじんと続いている。

 痛い・・・。痛い。痛い。

 私は枕をきつく抱きしめながら、一度も会ったことのない男性の事を考えてしまっていた。それから、保健の先生に押さえつけられていた時の事を。嫌だったはずなのに、どこか後ろめたく感じながらその事を思い出している自分がいた。


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3へ続く

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Category: スパンキング(novel )
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Comments

to ポン太さん

 ご指摘ありがとうございます。
誤字脱字誤変換時節の不一致等々
気が付いたら教えてくださると助かります。
一人で書いてると頭が思い込み修正をしてしまうので
読み返しても、まったく、気が付かない事が多々有ります。(^▽^:
特に今回は、書き直してるので、いろいろいろいろ。orz
 途中からは、まだストーリーができていないので
どこへ転がるかは未定ですが、頑張ります。

さやか#- | URL | [編集]
2015/05/08(金) 11:54:41

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