2013
私をたたいて!

メラニー・ムレール 著
長島 良三 訳
あらすじ
「O嬢の物語」「絆」「サクリファイス」の流れを汲む、フランス現代女性作家による性文学の金字塔。暴力的な男の性愛の下僕となった美しいパリの女子大生が明かす、禁断の私生活。欲望と隷従の世界の果てにあるものは…。
(「MARC」データベースより)
淡々と、日々を重ね、行為を重ねていくふたり。最初は遊びだったものが、いつの間にか女にとって生きる事すべてにすり変わっていく。美しく、若く、みずみずしかった彼女。享楽的な男の行為を際限なく受け入れて、なんでも受け入れられる自分という事に自負心を持っていたはずなのに、多頭という現実を前に、プライドを保てなくなっていく。
男は、自分のものである女を他人に与え続ける。自分のものである証として。
ある日気がつくと、女は自分が堕落して居ることに気がつく。後戻りできない感情と経験と男への執着に呆然とする。だんだんおかしくなっていく女は、自らを傷つけ、相手を傷つけ、それでも求めるものは決して与えられない。
わたしが監禁されてから、4日になる。地下室に囚われているのだが、壁に固定された鎖に、わたしの首輪が繋がれている。地下室は暗くて、寒かった。わたしの両手は相変わらず後ろ手に縛られたままだ。わたしにはもう時間の観念がない。
わたしはこの囚人状態が好きだ。
絶対に釈放しないで、絶対に!
小型の飯盒がわたしのそばに置かれている。ときどき、あなたはその飯盒に水を入れに来る。そして、その水を手でしゃくって、私に飲ませる。私は純化される。愛され、崇められる女になる。
そう、こうした瞬間にわたしを崇めるのは、あなただ、わたしのご主人様だ。これらの瞬間ほど、私達にとって大切な時はない。こうやってわたしを苛むためにあなたが勢力を注ぐことが、私を安心させ、わたしを庇護する。その勢力の根底にあるのは、あなたの愛だ。だから、わたしはあなたを愛し、あなたの虐待に身を捧げるのだ。もっとわたしに忙殺されつづけて。これからもずっとあなたのものにしておいて!
わたしの両足は、踝に固定された金属の棒によって絶えず広げられたままだ。あなたが、強いたこの姿勢のため、わたしの体はあちこちが痛い。毎朝、あなたは私の身体を念入りに洗いに来てくれる、ただし石鹸を使わずに水だけで。そのあと、食べ物をくれるが、ほんの少量だけだ。私たちは口を利かない。わたしは、あなたの方へ目をあげる勇気がほとんどない。わたしは一生、このままにしておいて欲しかった。あなたの鎖から絶対に開放しないでいて欲しかった。永久にあなたの籠の鳥のままでいたい。
あなたから世話されているときが、わたしにはひどく快適なのだ。
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