2010
隣りの家の少女
「苦痛とは何かを、知ったつもりになってないだろうか?」


彼らは三インチの釘をウィリー・シニアが天井に差し渡した梁に打ちつけていたー二本の釘が1メートル弱の間隔を置いてつきでていた。
そしてメグの左右の手首に縛りつけてある、適当な長さに切った二本の洗濯ロープをそれぞれの釘に巻き付け、その端を下に回して、どっしりと重い作業台の脚に結んであった。
メグは小さな本の山ーワールド・ブック百科事典の三巻分ーにのっていた。
目隠しをされ、さるぐつわを噛まされていた。
裸足だった。ショートパンツと半袖のブラウスは薄汚れていた。両腕をあげているせいで、ショートパンツとブラウスの間の隙間からへそが覗いていた。
めぐのへそはひっこんでいた。
(中略)
「白状させれば勝ちっていう<ゲーム>をしようよ」ウーファーがそういった。
「いいよ。何を白状させる?」とルースがたずねた。
「なんでもいいよ。とにかく秘密を吐かせるんだ」
ルースは笑顔でうなずいた。「いいね。だけど、さるぐつわをしたままじゃ口をきけないじゃないか」
「すぐにしゃべられせたんじゃおもしろくないよ。ママ」とウィリー。「どっちにしろ話す気になればわかるさ」
「ほんとかい?白状するかい?メギー?話す気になったかい?」
「話す気になんかなってないよ」とウーファーがいいはった。だが心配にはおよばなかった。メグは声をあげなかった。
「それじゃどうする?」ルースが問いかけた。
戸口に寄りかかっていたウィリーが、ゆっくりと部屋にはいってきた。
「本を一冊減らそうぜ」とウィリーがいった。
ウィリーはかがみこんで、まんなかの一冊を抜きとると、あとに下がった。
ロープがますますぴんと張った。
ウィリーもウーファーも懐中電灯をつけていたが、ルースは、懐中電灯のスイッチを切ってだらりと垂らしたままだった。
メグの手首がロープにひっぱられてかなり赤くなっているのが分かった。背中がわずかに弓なりになっていた。半袖シャツがずり上がっている。メグは残りの二冊の上に、どうにか足の裏をつけて立っていた。ふくらはぎと太ももに、早くも力がこもっているのが分かった。つかの間爪先立ちになって手首にかかる力をやわらげたから、また足をおろした。
ウィリーが懐中電灯を消した。
その方が薄気味悪かった。
メグは、かすかに揺れながら、黙って吊るされていた。
(中略)
「白状するチャンスを与えてやっちゃどうだい?そういう趣向だったんだろう?」とルース
「ダメだよ」とウーファー。「早すぎるよ。それじゃおもしろくないもん。もう一冊抜いちゃいなよ、ウィル」
ウィリーはそうした。
そしてついに、メグはさるぐつわの奥で、一度だけ、何やら声をあげた。とつぜん、息をするだけで苦しくなったせいで漏らした、小さなうめきの様な声だった。ブラウスは胸のすぐ下までずりあがり、腹が不規則なリズムで苦しげに波打って、胸郭が浮かびあがった。つかのま、頭ががっくりとのけぞり、それからまたもとにもどった。メグはきわどいバランスをたもっていた。からだがゆらゆらと揺れはじめた。
顔に赤みがさしていた。筋肉が緊張していた。
わたしたちは黙りこくったまま見つめていた。
メグは美しかった。
筋肉の緊張が増すにつれ、呼吸にともなって声帯から漏れる音がいっそう煩雑に聞こえるようになっていた。声を出さずにはいられないのだ。脚がふるえはじめた。まずふくらはぎが、つぎに太腿が。
脇腹が汗の薄い膜でおおわれ、太腿が光った。
「裸にしちゃおうぜ」ドニーがいった。
その言葉は、一瞬、つるされているメグのように、危ういバランスをたもちながら宙吊りになっていた。
だしぬけに、私は自分が眩暈を起こしている事に気づいた。
「そうしよう」とウーファーがいった。
メグも聞いていた。首を左右にふった。怒りと恨みと恐怖がこめられていた。さるぐつわの奥から声が聞こえた。いや。いや。やめて。
「隣の家の少女」J・ケッチャム作 扶桑社ミステリーより
ちょっと動画をダウンロードするために、プレイヤーを立ち上げた時にそこに現れる広告リンク。今まで一度も踏んだ事ないし、気にもとめない
人生で、なぜ今日だけこのリンクを踏んでしまったのか。よりによって
結構今日は忙しい。疲れてるし、時間に追われてる。「隣りの家の少女」なんて変哲もない題名のリンクを、なぜ、わざわざ、踏んでしまったのか。
勘というものは恐ろしいのである。(。・_・。)
現れたのは少女監禁虐待映画の予告編でした。
「苦痛とは何かを、知ったつもりになってないだろうか?」この文章で始まるこの映画の原作は、長い事劇薬小説の1位を保持してたらしい。
スティーブン・キングが絶賛する、伝説の名作。泣くではなく、吐ける事保証付き。orz
ちょっとネットで検索すると、怖くてページをめくれない。ラストにもうめくるべきページが無い事にほっとした。不快指数マックス等など・・・読後感の後味の悪さは、素晴らしいものがあるようです。。。
子供を虐めるのって、嫌いなんだよなぁ・・・。虐待ってSMとは、別モノだろう。。。。。。
そう思いながらも、やっぱり読んでしまう私なのでした。
この小説で一番怖いのは、虐待に加担する人達もなのですが、鬼畜の所業を目にしながら、集団の中にいるとこれってもしかして「正しい」?とか思ってしまう事なのでです。
普通の12歳の男の子が、異様な事態のただ中で、自分の立場を保持しながら、右へも左へも働きかけ、おいしいものをかすめ取ろうとする本能とか。屈服しない少女を相手に、いたいけない9歳の妹を人質にとって、反抗をそぎ落として行く方法を学んでいく過程とか。
しかし、もっと怖いのは、虐待について、深く深く沈思黙考すべきところで、萌える描写を探してしまう、SMヲタでありましょうか。分析しながらも、ほんとに吐き気がしてきたりw こだわりってどうしょうもないね。サディズムは、やっぱり、本質は「鬼畜」です。うん、間違いなく。
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