2009
背徳の仮面

「背徳の仮面」
作者:不詳
訳:行方未知
富士見ロマン文庫
1981初版
カバー:金子國義
アリスへの求婚をことごと邪魔してきたアリスの姉マリオン。ジャックは、彼女を快楽の部屋に導き入れる機会を手中にした。いつもの手続きと、いつもの愁嘆場の後で、わたしはマリオンの理解と愛情を手に入れる事になる。
マリオンにも、頑なになる辛い理由があった。思いもかけず失敗に至った結婚生活。その要因のひとつである手に負えない小間使いケイを、ジャックは、従順な使用人になるべく、快楽の部屋へ呼び込むことにした。
手首を縛られ、両手を吊るされた娘は服をはぎ取られ、主人の枝鞭をたっぷりとそのお尻にうけることになる・・・・。
「あああ!ほんとうです。約束します。自分の立場をわきまえます。誓ってもいいんです、奥様。だから打つのだけはやめて。もうこれ以上我慢できないーできないんです!ジャックさん、奥様をとめてくださいーわたし、いい娘になりますーもう二度と怒らせるようなことはしませんから、わかってください、おねがいです!」
「この娘は十分罰を受けたんじゃないかな、マリオン」わたしは仲裁に入った。「きみも息切れがしているようだし、顔もほてってるよ。そこの居心地のいい椅子に座って、少し休んだらどう?」
マリオンは喜びに溢れた長い吐息をつき、鞭をわたしに手渡した。黒味勝ちの碧い瞳に光潤んだ輝きや濡れた赤い唇のわななき、あるいは堂々とした、胸乳の喘ぐ様子から判断するに、鞭を揮う立場を存分に楽しんだことは明らかだった。
「この娘をおろして解放してやるつもり、ジャック?」椅子に腰をおろしながら、マリオンが訪ねた。縛りあげられた小間使いの右側に引き寄せた椅子に座っていると、囚人の前も後ろも両方が見える位置になる。
「まさか、そんなことはしないさ」わたしの返事だった。「この生意気な娘にきみはもう充分つけを返してもらっただろうけど、ぼくの分はまだだからね」
言葉とともに、身体をひるがえし、胆をつぶした赤毛へと面とむき直った。自分を責め苛む恐ろしい道具がわたしの右手にしっかり握られているのを目にすると、哀れな泣き声を貼りあげる。
「まさか、また鞭で打つんではないでしょうね?お詫びします、わたし本心から誤りますーだから、許して。堪忍してください。我慢も限度なんです!」
「いやいや、そうでもないだろう」皮肉をこめていいかえした。「ぼくとしてはおまえの横着な後ろ側を打つつもりはないんだ。まだ触れてない部分が残っているし、罰を加えるには有り余る領域がひろがっているわけだからね」
そういいながら、わたしは鞭を伸ばし、むき出しになった太腿の上部を軽く叩いてやった。若い女性の証である宮殿を築いていた。
ケイはまるで信じられないという表情で、鞭を見おろしていた。が、やがて狂ったように身を退き、顔をのけぞらせてわめいた。「なんていうことをーまさかそこを打つんではないでしょうね?許してちょうだい、おねがいです、勘弁してください!」
「おまえの願いは罰が終わった後でききいれることにしよう。将来、行いがよくなるという約束が保証されてからのことだ。」私の答えはこれだけだった。
腕を引くと、しなやかな鞭を軽く放った。ねらいはケイの太腿。動揺し、緊張した、柔らかなつけ根の部分だった。ひと振りのお返しに、ケイは身体をねじって、腰を引き、耳ざわりな金切り声をあげた。「いたい!ひどいわ、そんなところをー後ろよりもいたいのよ、すごくいたいのーああ、ジャックさん、やさしくしてください、許してくださいーわたし、耐えきれない」
「しかしね、おまえは、僕が満足するまで耐えなければならないんだ」ほくそ笑みながらいった。そしてふたたび靴下の上あたりに振り下ろし、ケイがもだえ、身をちぢませるさまを見やった。苦悶のために大きく見開かれた彼女の眼には涙が溢れ、やがて頬を伝って流れ落ちた。
「咲は進む前に靴下をおろしたほうがいいかな。太ももを打つ鞭のじゃまっけだからね」」(中略)
「いやよーおねがい、もういや!これ以上こらえきれない!あなたの慈悲を乞うにはわたしなにをすればいいの?奥様の前でちかうわ、心の底から誓う、二度と無礼なことはしません!許して下さい、わたしを放してください」ケイは口走っていた。
わたしは少し後退して距離をとった。枝鞭をのばすぃ、しなやかな尖端をけいの左足膝頭のやや上部。それも内側にむけて払った。
「この部分がどれだけ感じやすいか試してみようじゃないか」声高に注意を促しておいて、手を後ろに引き、空を着る一撃を放った。鞭の切っ先が太腿の低い後部に当った。
「いたいー我慢できない、ひどいわ!ジャックさん堪忍して。お尻と同じくらい痛いの!」ケイは泣きわめいた。
「尻と同じくらいと聞くと勇気が湧くな」皮肉をこめて返答した。「後ろ側を打たれて、ちょっとしたひっかき傷なのに、まるで切れぎれにされたみたいないい方だったもの。おまえの身体はどこもここも皮が厚いとしかいいようがないぞ」そういいながら、もう片方のひきつった、滑らかな足をつつき、器用に鞭を揮って弄んだ。おかげでケイは狂ったように身体を揺らし、あちこちと悶え苦しんだ。両の乳房がえもいえぬ姿で揺れ動き、戦く唇からは金切声が洩れていた。
「今より少し上の部分はもっと効果てきめんなんだ」そういいつつ、左太腿の内側、ちょうど中くらいの位置にわたしは枝鞭の先を押し付けた。
ケイは鞭を見おろし、激しく慄えていた。足の筋肉は両脚を閉じようといたずらにあがき、ひどくたわんでいた。
「じゃっくさん、たのみますからそこはやめてーわたし死ぬわーわたしを殺すつもり!おねがいします、後生です、伏して慈悲を請います、わたしを容赦して、許してください。あなたの命令ならなんでもききます、誓っていうとおりにします、だからそのおそろしい鞭だけは下に置いて!」
「罰を充分に受けた後だったらそうしてもいいがね。そのまえには絶対にだめだ。身を堅くして、受けるべき仕打ちに耐える心がまえをしておくことだな」わたしはそういい放った。
第三巻です♪
この本の中でジャックが彼女たちに行うあらゆる責め苦の理由はなんだでしょうね。それは、女が「生意気な態度をとって、従順ではなかった。」と、云う、その事に集約されています。そして、そうなるのは、彼女達が性的に押さえつけられて、人生を楽しめていないことから起こる・・・と。(^▽^;)
随分、身勝手で、都合のいい理屈だけれど、関わっている女性がみな納得して「お楽しみ」を見つけ、いそいそとジャックの元に集まっているのですからおっけーなのであろう。w
ただ、さすがに身分制度のしっかりしたイギリス。ジャックの女性に対する扱いは貴婦人と使用人(小間使い)ではしっかり分かれています。
まず、使う鞭が違う。貴婦人に対しては、柔らかく決して「痕の残らない」(ほんとーかいな)そのために作られた乗馬鞭を使うし、打つ回数も少ない。罰を与える事だけでなく、鞭打ちによって、性的興奮を呼び覚まそうとします。
それに対して、使用人には、枝鞭や樺鞭のように、最初から実際に懲罰に使われている鞭を使用し、容赦なくしっかりと打ちすえています。
その裏に、支配する者による鞭の懲罰が許されていた文化があるのかもしれません。
ぎゃあぎゃあと、うるさく、抵抗する小間使いたちが、少しづつ、少しづつ、変化して行くその様によって、コントロールすると云う楽しみを伝えている物語だと思います。ヾ(@⌒▽⌒@)ノ
