2009
狭間に・・・11

押し殺す必要が無くなった喘ぎに、息を弾ませながら、私はもがいた。
「もう、終わり。もう、もう、終わり。」
「どうして?」
彼の手は、さっきよりもゆっくりと、けれど充血して、より感じる場所を深くえぐり続けた。
「だって、もう、逝っちゃったの。もう、逝っちゃったの。だから、もうおしまい。」
「もう一度逝けるよ。何度でもね。」
「いや、もう、いや・・・。」
私の声には鳴き声が混じり始めていた。
「見られちゃった。見られちゃった。知らない人に。」
「うん」
「嫌って言ったのに、言ったのに・・・。」
「うん」
手が、ゆっくりと、中から出て行くと、花びらを押し広げ肉目を剥きだした。触れるか触れないかの微妙な距離で、円を描き続ける。快感は、深く、私をしっかりと掴んで膨らみ続けて行く。私は、自分の身体が、滑り落ちて行かないように、必死で椅子にしがみつく。
「考えたことがある?」
彼の人差し指が皮を剥き、緩く添えられた親指が円を描く、中指と薬指は全く別の生き物のように動き、中に深く入り込んでくる。私は、首を振り続け、彼の指さきで踊った。
「カラオケボックスって、監視カメラが付いているんだよね」
え?薄いピンク色の靄の中、私の肉はひくひくと痙攣した。
「多分、さっきの店員が、戻って行って・・同僚に言うだろうね」
「この部屋で何が起きているか」
「手の空いたものは、替わりばんこにカメラを覗きこむ。君が椅子に縛られて、身動きのならない身体を、僕にまさぐられている様を観るためにスカートをめくりあげられて、何もかも晒しているところを。」
「カメラの位置がどこだか知っているかい?」
「君のお尻の後ろの方だ」
「きっと何もかも丸見えに映っているよ」
「録画されているフィルムの上にも」
「君の、痴態が焼き付けられている」
「受付に居た、あの若い女性も、きっと、それを見ているね。」
恥ずかしいって事が、身動きがならないという事が、逃れられないって事が、こんなにも快感を強くするなんて思っていなかった。
思っていたけれど、ほんとに知ってはいなかった。彼の言葉の一つ一つが、私の、心を揺さぶり、身体の中を、恥ずかしさが荒れ狂う。優しい愛撫がもどかしい。私は、泣きながら、しゃくりあげながら、揺れた。
続く
