2009

06.04

狭間に・・・11

狭間に・・・1から読む









 押し殺す必要が無くなった喘ぎに、息を弾ませながら、私はもがいた。

「もう、終わり。もう、もう、終わり。」
「どうして?」

 彼の手は、さっきよりもゆっくりと、けれど充血して、より感じる場所を深くえぐり続けた。

「だって、もう、逝っちゃったの。もう、逝っちゃったの。だから、もうおしまい。」
「もう一度逝けるよ。何度でもね。」
「いや、もう、いや・・・。」

 私の声には鳴き声が混じり始めていた。

「見られちゃった。見られちゃった。知らない人に。」
「うん」
「嫌って言ったのに、言ったのに・・・。」
「うん」

 手が、ゆっくりと、中から出て行くと、花びらを押し広げ肉目を剥きだした。触れるか触れないかの微妙な距離で、円を描き続ける。快感は、深く、私をしっかりと掴んで膨らみ続けて行く。私は、自分の身体が、滑り落ちて行かないように、必死で椅子にしがみつく。

「考えたことがある?」

 彼の人差し指が皮を剥き、緩く添えられた親指が円を描く、中指と薬指は全く別の生き物のように動き、中に深く入り込んでくる。私は、首を振り続け、彼の指さきで踊った。

「カラオケボックスって、監視カメラが付いているんだよね」

え?薄いピンク色の靄の中、私の肉はひくひくと痙攣した。

「多分、さっきの店員が、戻って行って・・同僚に言うだろうね」

「この部屋で何が起きているか」

「手の空いたものは、替わりばんこにカメラを覗きこむ。君が椅子に縛られて、身動きのならない身体を、僕にまさぐられている様を観るためにスカートをめくりあげられて、何もかも晒しているところを。」

「カメラの位置がどこだか知っているかい?」

「君のお尻の後ろの方だ」

「きっと何もかも丸見えに映っているよ」

「録画されているフィルムの上にも」

「君の、痴態が焼き付けられている」

「受付に居た、あの若い女性も、きっと、それを見ているね。」

 恥ずかしいって事が、身動きがならないという事が、逃れられないって事が、こんなにも快感を強くするなんて思っていなかった。 
 思っていたけれど、ほんとに知ってはいなかった。彼の言葉の一つ一つが、私の、心を揺さぶり、身体の中を、恥ずかしさが荒れ狂う。優しい愛撫がもどかしい。私は、泣きながら、しゃくりあげながら、揺れた。


続く
Category: 物語
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