2009
狭間に・・・10
店員の上ずった声に、部屋の中で起きている事に動揺しているのが分かる。引きずるような靴の音が、テーブルの上にコップを置く音が、耳の中で反響した。それでも、彼の椅子の上の身体が、私の一番隠しておきたい場所を、店員の視線から遮ってくれているはずだ。何もかも、何もかもは見えていないはず・・・。
その時彼の手が、私の中に入って来た。
ぬちゃ・・・。
濡れそぼり、充血し、男の手を待ち望んでいる身体がたてる音が、部屋に響き渡った。
店員が、テーブルの上に飲み物を置いてそのまま固まっている気配がする。私は眼を閉じて祈った。お願い。早く出てって。見ないで。見ないで。出て行って。突き上げてくる物が私に、無意識に首を振らせた。髪の毛が揺れる。
私の中の彼の手が、ゆっくりと蠢いた。壁をこするように中へ入って来る、そして、2本に増え。開き。またゆっくりと出て行く。と、思う間もなくもう一度中へ。
音が響く。濡れた音。性器が立てる音が。
テーブル越しに覗きこまれているのが分かっていて、どうしようもなかった。
店員に、尻の間から、彼の手が出たり入ったりしているのが見えているだろう。ひくひくと体が反応し、肉が痙攣し、ぴちゃぴちゃと、淫猥な音を立てる身体が、蠢いているのが。部屋中に充満する女の匂いが。首を振るのをやめる事が出来なかった。声をたてまいと、唇を噛みしめて、吹き荒れる快感が沸き上がって来るのをを閉じ込めようとした。
出ないで、外に。助けて。
止まっているかのようにゆっくりと時間が流れ、店員が、スローモーションのように動き、部屋を出て、ドアがしまる音がするまで、どれくらいの時間があったのか分からない。不自然なほどにそれは長く、私は何度も何度も浮き上がり、うねりに飲み込まれそうになっては自分を引き戻した。
ドアが閉まった瞬間に、私は叫び声を上げていた。
「いやあっ!」
そして、逝ってしまった。耐えきれずに。
続く
