2009
狭間に・・・6
「分からないのがいいの?」
「ええ・・・それに・・・恥ずかしい。」
「恥ずかしいの・・・好き?」
「嫌・・・・好きじゃない。」
「よかった。」
彼が、ちょっと笑った気配を感じて、私はほっとする。何でほっとするのか分からないけれど。彼の低い声が、彼の胸の中で震えるのを感じて、それで、私は安心した。そんな事で安心する自分がちょっとおかしかった。腹ばいになって、椅子に腕を縛りつけられて、男に、尻を触られているのに、安心する自分が、おかしかった。
そう、乗せられていただけの手がゆっくりと円を描くように動きだしていた。彼の手の温かみが、広がって行く。お尻の上全体に、身体の上全体に、心の隅々に。
ふっとその手が離れると、スカートの下へ潜り込んできた。テロンとした生地のフレアスカートは、男の手をなにもふせぎはしない。ストッキングの網目の手触りを楽しむように、腿の付け根から尻の上を撫でまわす。それから足の間に潜り込もうとする。隠しておきたい場所へ。ぴったりと閉じた足の間へ。
「手が入らないな。」
入らないとは言っても、その場所に触れられるのがガード出来る訳ではない。膨らみや谷間の上を指先は、気まぐれに、移動した。熱くなり、膨れ上がっているだろう私の身体はそれだけで、気持ちよさに震えた。
「触りやすいように、足を広げて。」
私は、息を呑む。相手が触られるように、足を広げると云う行為を、自分からすると云う事に。羞恥がこみ上げてくる。広げていても、閉じていても、何も変わらない。変わらないはず。そう言いきかせても、羞恥は、広がるばかりだった。私は、喘ぎながら、膝の位置をずらした。
「もっと。」
膨らみを摘まんだり、擦ったりしながら男が要求する。その要求に応えて、もっと触りやすいように足を開く。まるで、淫売のように。自分を貶めて行く。それでいて相手の態度は、静かで、手の動きは優しい。指の先をマーブル模様を描くようにゆらゆらと揺らめかせながら、裏返した爪の先でストッキングの縫い目を辿り、円を描く。
多分、濡れて来ている。布地は湿ってきている。息が弾んでくる。身体が熱く火照って来る。それを知られてしまっている。知られるように自分から差し出したのだと思うと、それが来られ切れないほどに恥ずかしかった。我知らずに足を閉じようと、力を込めてしまう。
「こら、閉じちゃだめだ。」
手の動きが止まる。彼は掌を、覆うように、その上に乗せた。
「開いて、もっと、大きく。」
「もっと」
「もっとだ。」
続く
