2008
ね・ネット調 教11
初めから読む
動けない。
カメラの前で私は硬直していた。
息をする度に、滴り落ちる滴が、溢れる寸前の器の上に落ちていくのが感じられる。一滴、また、一滴と。私は、身動きもならず、その有様を見つめるだけ。溢れさせないように、ただ、固まって、じっと耐える。
もう、だめ。もう、耐えられない。心の中で繰り返しながらも、どうしようもなく、歯を食いしばるしかなかった。強張った内腿が細かく震えだし、胸苦しさに、張り裂けそうだった。
コロロン・・・・。
「よく我慢したね。」
涙に霞む視界に、文字が現れる。
「いきなさい。」
言葉とともに私は弾け。宙に投げ出された。
触れてもいない身体の中を、鋭い喜びが駆け抜けていく。
何が起こったのか、自覚する事も出来ないうちに、私は、本能的に、膝頭を胸に引きつけて身体を捻じり、椅子の背中にしがみついた。転倒しなかったのが不思議なくらいだった。天地がひっくり返り、自分がどちらを向いているのかも分からない感覚に翻弄される。
なぜ?どうして?何が起こったの?
打ち寄せる波が次々と襲いかかってきて、必死に背もたれにしがみつく私を引きずりまわす。我に帰るまでの長い時間を、私は、ただ、そうして何かに摑まる事でやりすごすしかなかった。
「私に、何をしたの?」
言葉を口に出せるようになるまで、どれくらいの時間が経ったのだろう?その言葉は、考えて言ったものでは無かったし、ふさわしいものとも言えなかったけれど。
「何も・・・」
「何もしていない。君が、自分でしたんだ。」
自分でした?私は、あっけにとられて、現れた文字を見つめた。意味が分からず、思わず、いやいやと、首を左右に振る。
「そんなはずないわ。だって・・・」
今まで一度もあんな風に深い快感にとらわれた事はなかった。それも、身体に触れたわけでもなかったのに。それに、それに・・・
「蓮さんが、しろって言ったんじゃないの。」
「言ったね。でも、そうしたのは、ゆみかだ。」
私は、ぽかんとその文字を見つめた。そんな事ってあるだろうか?私は、彼に約束し、そして従って来たのだ。それなのに、こんな事態を迎えて、どうやって自分で納得したらいいのかも分からない私を、蓮さんは、放りだそうとしている。
「違うわ。蓮さんが、そうしろってっ!」
思わず大きな声を出してから、はっと、口を押さえた。まるで、反抗期の子供のような振る舞いだった。赤くなり、口調を落として囁く。
「蓮さんが、脚を机の上にあげろって言ったから・・・・。だから、私。連さんが、言ったからしたのに。」
「そうかもしれない。でも、私が、ゆみかの足首を掴んで、無理に開かせたわけじゃない。」
私は、現れた文字が暴き出す現実に息を呑んだ。
「脚を開いたのはゆみかの意志だろう?」
身体がとろけてぐずぐずになっていた私は、冷たいものを押し当てられた感覚にぞっと総毛だった。
続く…

