2008
お仕置き・57
琴音・8(第二部・義母)を先に読む
琴音・16(第三部・義父)を先に読む
琴音・20(第四部・お披露目)を先に読む
★琴音・24★
琴音に告げていない事がひとつあった。今日の日に招かれている親族以外の男たち。その男たちの先の枝葉の先にも、河野の家にあるような隠されたいろいろな習慣がいくつも網の目のように広がり、それは、他の地方の旧家とも重なり、日本全国に妖しく潜み続けている事である。
智也も、それらの宴席に侍る機会を何度か得ていた。中には、河野家のように、形ばかりの「性の儀式」とは、無縁の様相を示している家ばかりではなかった。いや、むしろ、あざといまでに無残な加虐の行為が連なった模様を成す織物だったと言えよう。
だが、絶対に表に見せてはならない秘密を共有しているという事が、それらの家の結びつきをより強固なものにしていた。そして、そのつながりが多くの家の経済的な結びつきを側面から援護していたのである。
↓クリックすると動画サンプルへ

河野の家をその模様へ組み込んだのは、智也の祖父だった。その必要があり、家のために自分の妻を、娘を、差し出したのだ。だが、それだけでは済まなかった。家族を犠牲にしたと言えば、むごいありようだったかもしれないが、連なりに入りこむ事は、加虐の連鎖に自らが繋がれる事でもあったのだ。
一度味わった、背徳の美酒が、男たちを引きつけがんじがらめ取り込み、女たちを蕩けさせていった。その事について、父や母がどう考えているのかは、分からないけれど。自分がそうである事は、智也自身にはよく分かっていた。分かっていて愛する者を引きこんだ。
↓クリックすると動画サンプルへ

まだ、もっともっと若く、何も知らなかった頃に、他の家の宴席に招かれて行った日。河野の家になかった、性としての儀式を目の当たりにした時、自分がそれを嗜好する人間なのだと思い知らされたあの日。
もしかしたら、家を捨て、名を捨てて、違う人生を歩めるのではと、模索した日々。忌わしく振り棄てようとしながらも、結局は、忘れられず、繰り返さずにはいられなかった加虐の行い。
後悔しても、もう遅い。琴音に、違う道を行けと言う事が出来なかった。遠ざかり、幸せになれと言えなかった。琴音を自分の腕の中に抱き締めたかった。痛めつけると分かっていて、まやかしの誘いを仕掛けずにはいられなかった。
琴音を愛していた。
↓クリックすると動画サンプルへ

すっかり汗に濡れ、ぴったりと張り付いた絹の着物の裾を乱れさせたまま、呆けたように、智也の方へ視線をめぐらしていた琴音が悲鳴をあげた。後ろから近づいてきた智也の母が、呵責せずに、彼女の、身体を覆っていた着物をしっかりと結んでいた伊達巻きの結び目を素早く解きほどいたのだ。
しゅるしゅるしゅるっと絹が鳴る音が響き、帯は素早く抜き取られて行った。はらりと、着物の合わせ目が緩み、琴音は生き返ったように、とび上がってぞの前合わせを抑えた。
つづく
