2007
お仕置き・28
煙草の火を消すと、クロードは座りなおした。椅子の肘に腕をついて傾けた頬を乗せる。
「ストッキングと下着を脱いで。」
まるで、暑いから上着を脱いで、というような自然な抑揚でちょっとした目配せと供にクロードが彼女に向かって言う。それは、命令というよりは、提案に近いものだった。カークランド夫人はますます赤くなりながら再び私の方をちらりと見るが、それ以上の抗弁もせずにスカートをめくり揚げた。靴下留めをひとつずつ外し始める。普段は絶対に人目に晒されない太腿が本人の手によってしどけなく露にされていく様を僕は黙って見つめた。艶々と白く光っているその素肌を。くるくるとストッキングが巻き降ろされ素肌が晒される。特別に親しい間柄でもなければ女性は決して素足を男に見せたりしない。ハイヒールがカタンと音を立てて床に落ち、靴のいましめから自由になった右足の爪先から絹のストッキングが抜き取られた。そうして同じようにして左足も。カークランド夫人はストッキングを丁寧に畳むと小さなバッグの中にしまった。
↓クリックすると動画サンプルへ

その動作が彼女のスカートを元に位置に戻してしまった。下着を脱ぐためにはもう一度捲り上げないとならいない。彼女は大きく息を吸うと、一度止めた。その息をゆるゆると吐き出しながら屈みこみ、真っ赤な顔を伏せて震える手をもう一度スカートの下へ差し入れる。男の前で下着を脱ぐために。白く薄い綿ローンの下着がストッキングに続いて彼女の爪先から抜き取られた。出来るだけ小さな動きで脚を踏み換えて反対の脚も引き抜こうとする彼女のそのしぐさが、恥ずかしい行為を出来るだけ美しくさりげなく見せようとする女性の想いを示しているようだった。
→クリックするとギャラリーへ
↓クリックすると動画サンプルへ

「下着をこちらへ。」
クロードが身体を起こすと手を差し出した。カークランド夫人は再び目を見張り、大きく息を吸い込んだ。要求された事が信じられないというようにかすかに左右に首を振ったものの、それ以上の抵抗も見せずに彼女は下着を掌で隠すようにして小さく畳み、クロードの差し出した手の上に乗せた。
クロードはその下着を膝の上にひらりと拡げた。今の今まで身につけていた物をそうしてあからさまに拡げられてカークランド夫人はますます赤くなってそれを取り戻そうとするかのように手を伸ばしたり縮めたり掌を握りこんだりを繰り返す。彼女の女性らしい本能がクロードの手からその下着を奪い返したいと動くとしたら、それを押し留める気持ちは何なのだろうか。私はその彼女の様子を不思議な気持ちで眺めていた。この場合どちらが本当に理性によるものなのだろうか。もしも、本当に理性的な判断が出来る状態ならば、そもそも男の手に下着を渡したりはしないだろう。恥ずべき行動を続けられるように本能の動きを押さえつけようとする理性の存在という考えはどこか矛盾している。そもそもいたぶられる事を望むマゾヒスティックな感覚は理性とは程遠い所にあるのだろうか。
→クリックするとギャラリーへ
↓クリックすると動画サンプルへ

「君はどう思う?そもそも、彼女は非常に慎ましくきちんとした女性である事は疑いようも無い。」
クロードは膝の上に乗っている下着を軽く弄びながら、話出した。
「常識も備えているし、教育も受けている。ちょっと会っただけでは分からないかもしれないが、本当に気立てもよく誠実な女性なんだよ。私のような嘘つきで平気でひどい事をするような男にそもそも関わるべきじゃないと思われるような素晴らしい女性なんだ。それなのに・・・」
クロードは改めて立ったままいたたまれない様子でもじもじとしているカークランド夫人を見上げると、右手で彼女の方を軽く指し示した。
「愛してもいない男のために、ほとんど、知りもしない君の前でこんな恥知らずな事をやらざるをえない。」
↓クリックすると動画サンプルへ

「それは、彼女がただお尻を叩かれる事を望んでいるからなんだ。」
「ああ・・・・。」
溜息をつくような、かすかな羞恥の声が彼女の唇から漏れた。ぎゅっと握りしめられていたレースの手袋をはめたままの手が持ちあがり赤くなった両頬を押さえる。
「私は、何人もの女性のお尻を叩いてきたけれど、彼女達は決してその行為に歓びだけを感じている訳じゃない。むしろ、痛みの方が多いとさえ思うこともあるんだ。それでも、彼女達はそうされたがっているし、そのためにこんな辱めにも黙って耐えるという訳だ。」
「恥ずかしい行為を要求される事が喜びに繋がるって訳じゃないのか?」
「さあ、どうだろう・・・。」
クロードは再び彼女の方を見た。
「ミレーユ。どう?こうやって男の前で下着を脱ぐ事は性的に感じる行為なのかい?」
カークランド夫人は目をぎゅっと瞑ったまま、赤くなった顔を必死の表情で左右に振った。
→クリックするとギャラリーへ
↓クリックすると動画サンプルへ

「目を開けて。ミレーユ。」
クロードの声はあくまでも優しく静かで、彼自身が性的に興奮している様子は微塵も感じられなかった。
「僕をご覧。」
夫人は素直に目を開けると、クロードの顔を見た。クロードはわざとらしく手の中の下着を拡げてみせる。
「ああ・・・・やめて。」
呟き漏れる夫人の声音は、相変わらず拒否しているようには思えなかった。だが、その表情は恥ずかしさにかすかに歪み美しく整った彼女のその表情が日頃取り澄ましている女性の決して見せない秘密を覗き見ているような興奮を私に覚えさせた。
いや、「ような」ではない。今、私の目の前に曝け出そうとされているこの一幕は明らかに彼女にとっては絶対に他人には見せたくない秘密に違いないのだった。寝室の奥深く引き出しの中に鍵をかけて仕舞われるような甘い秘密。
→クリックするとギャラリーへ
↓クリックすると動画サンプルへ

「ご覧よ。フィリップ。濡れているだろう。」
クロードが差し出した下着の中心は明らかに湿って透けていた。まるで科学の実験の成果を見せるかのようにクロードは無邪気に私に向かってそれを差し出した。私は黙って彼女の下着を受け取った。
「いやっ!」
押さえきれない小さな叫びがカークランド夫人の赤い唇から漏れた。大事なものを思わず取り返そうとするかのように私の手の上に乗ったその白く美しいレースの下着に伸びた彼女の手が、寸前で握りこまれ、おずおずとまた引っ込められた。
「お仕置きの量を増やしたいみたいだね。ミレーユ?」
明らかに面白がっているクロードの声に、恥ずかしさのあまりに顔を覆った彼女はいやいやと子供のように頑是無い様子で首を振ってみせる。甘えた少女が、父親の前でするようなその仕草はクロードの言葉を拒否しているようで、受け入れているのが明らかだった。
私は、非常に不思議だった。かすかに自分の温もりを残しているだろう下着を男達の前に拡げ弄ばせるのを貞淑な女性に許すほどの欲求という物はなんなのだろう。彼女の思わず見せるコケティッシュな動作が、決して嫌悪感を示していない事に安心して、私は彼女の下着を思わせ振りに透かして見入る。その実、私が見ているのは下着などではなく、彼女が隠しようが無く示して見せる羞恥の表情なのだった。
続く・・
