2007
桜
桜の木の下で待っていると約束をした
金の瞳の獣と
私は、むっつ
白い花が一面に散った
赤い着物を着てた
鶸萌黄の帯を締めてた
桜の木は家の前に咲いている
門を出て
桜の花びらが散り敷かれた
五段の階段を降りて
たったの三歩
一尺ほどの高さの崖をぽんと飛ぶと
外灯の光の届かない
木の下闇に獣は蹲って待っていた
獣が約束どおりに
その牙を私の皮膚に立てる時
冷たい湿った布団に包丁をつき立てるように
ちょっとへこんで
逆らって
それから ようやく諦めて
ずぶずぶとそれを受け入れるのが 見えた
ぼんやりと薄墨を刷いたような
ぴんく色の光の中で
私は
獣が音を立てて
私の身体を貪り喰うのを
じっと見て いた
ぼりぼり ぴちゃぴちゃ・・・
獣の骨を咬む音と
血を啜る音を
聴 きながら
待つ
囚われたの螺旋の中で
夜の清い空気のひんやりとした風が吹き上げる
桜の花びらを数えながら・・・
それから獣は満足げに舌なめずりをして
固くて丸い頭を 私の脛に擦りつけ
くちくなった胸を満足げに膨らましながら
また・・・
と、囁いた
また、来年、桜の木の下で

