2007
万里江
★万里江★
夕食の後で、コーヒーを給仕していた時、旦那様がつぶやかれた。
「今日はお仕置きをしよう。」
ソーサを手にカップを持ち上げるとカタカタと鳴って、自分の手が震えているのが分かった。怖くって苦しくって、そして熱くなる胸のうちを押し隠しようがなくって。赤くなった頬を伏せて、そして目をあげると旦那様は私を見てにっこりと微笑まれた。
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「ベッドにおいで。」
言われるまま、促されるまま、ベッドに上がるしか選択肢はない。脚を揃えてうつ伏せると、熱い頬にひんやりとシーツが触れる。
「さあ、どうしてお前はお仕置きされるのかな。」
ベッドの縁に旦那様が腰掛けたのだろう。スプリングがゆっくりと沈み、そして元に戻る。伸びてきた旦那様の温かい手がぴったりと閉じた私の足の上に乗せられる。

今日は、思い当たる事がない。何も失敗していないし、何も悪い事もしていない。そんな日は旦那様になんと答えていいのか分からない。
「お許しください。旦那様。万里江は悪い子でした。」
「悪い子?万里江は何をしたの?」
ああ、どうしよう。何をしたのを認めたら旦那様は満足してくださるのか。それとも、気が付かないうちにとんでもない失敗をしていたのかしら。いくら考えても思いつかない。そんな夜の気持ちは袋小路。

旦那様の手がガードルで吊られた絹のストッキングの上を優しく撫でる。それからゆっくりと太腿の間に滑り込む。あふっ。不意打ちだったので準備が足りず、息を押し殺せずに喘いでしまった。旦那様の手が、太腿を撫で上げてスカートをめくり上げる。ああ、恥ずかしい。こんな、明るい場所で・・・。私は火照った頬をシーツにこすりつけた。

「分かってないようだね。うんとお仕置きをしないと、思い出せないのかな。」
旦那様が動いて、ギシッとベッドがきしむ。私の右手を捕まえて、そして反対の手で左手を。ぐいっと強く引かれて私の両手はベッドの上の柵に押し付けられる。赤い縄が取り出されくるくると手首に廻される。いや。いや。くくるなんて、いや。くくられると逃げようがない。ひりひり痛むお尻を撫でる事もできない。そうは言っても、抵抗したり、「嫌」と言う言葉を口に出す事は私には許されていない。必死に唾を飲み込んで、その禁止された言葉を封じ込める。

しっかりと両手をくくった縄は、柵の向こうへ廻されて結び付けられた。縛られてお仕置きされるのは、自分で我慢するよりも辛い。耐える事よりも、痛みのほうへ気持ちが集中してしまうから。思わず腕を縮めようとして、自分の手首を痛めつけてしまう。
まだ、ぶたれてもいないのに、じんわりと涙が滲んでしまう。私は旦那様の思いのままに、お尻を叩かれるしかないのだけれど。怖くて、辛くて、惨めで、悲しい。そしてなぜだかじんわりと熱い。足の間がじんわりと熱い。

めくりあげられたスカートのウェストのジッパーを降ろすと、旦那様は私の足からフリルのスカートを剥ぎ取った。スリップを強くめくりあげて背中の方まで露出させる。それから、最後に残った白いレースの一枚を撫で回す。熱い掌は好き勝手にあちこちのくぼみへもぐりこむ。何をされても私に出来るのは身体をねじる事だけ。もがいたり、逃げたりすれば、もっとお仕置きが増えてしまう。

パッチン!
乾いた音を立てて、掌が私のお尻を叩く。
「さあ、思い出せたかな?かわいいメイドさん。」
焦らすようにまた掌が這い回る。でも、何も思い出せない。何も、思いつかない。
「ああ、申し訳ありません。旦那様。」
涙声で謝っても、嬉しそうなクスクス笑いを誘うだけ。何度も何度も叩かれて、お尻が熱く火照ってきて、ふっくら二倍に腫れ上がる頃。もう、掌の音は乾いていない。強く。弱く。湿った音を響かせる。

「強情だね。メイドさん。ケインを使わないと白状できないの?」
あああああ・・・・いやいや。そんなのいや。ケインなんてひどい。許して。許して。絶対にいや。
頭の中を駆け巡る言葉は口に出す事は許されていない。私は必死に頭を振りながら、手首を引き、顔をシーツに擦り付ける。そんな事をしても無駄なのに。お仕置きをどうするか決めるのは旦那様だけ。私に残されているのはただ悲鳴をあげることだけなのだから。

旦那様の手がお腹の下にもぐりこみ私の腰を持ち上げる。ふんわり、ふわふわの羽根枕が身体の下に押し込まれる。一個。二個。そしてもう一個。突き出されたお尻は旦那様にもっと叩いてとおねだりしてるよう。その上旦那様は最後に残った、薄いローンとレースの下着を、ずこしづつ、すこしづつ、引き下げ始める。恥ずかしさにすくみあがり、身体をちぢこめて脚をぴったりと閉じ合わせる。ああ、旦那様。いやいや。ごらんにならないで。

ヒュン。ヒュン。ヒュウウウウン。細いケインの風きり音が部屋の中に響き渡る。逃げ出したくて、恐ろしくって、身体中に力を込めて歯を喰いしばる。助けて。許して。お願いだから。幾つもの哀願の言葉が私の頭の中をぐるぐると廻る。でも、絶対に許される事はない。
一発目。鋭い唸りを上げながら私のお尻にケインが打ち降ろされ、私は仰け反り悲鳴を上げる。耐えられず、脚を閉じている事も出来ず、泣きながらバタバタともがく私。
ああ、旦那様。私がお仕置きされるのは、ケインが折れるまでぶたれるのは、全部全部、いたらぬメイドの私のためを思ってくださる旦那様の愛情ですよね。
・・・・・きっと。
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