2006

05.30

面格子

 もうひとつのブログ「人形のように」へ、ときどき「スパンキングとSM」から、リンクをたどって遊びに来てくれる人がいます。あっちの方は、このブログでは決して見せられないような甘いロマンスやボーイズラブと言われる男の子同士の話をSMをメインにして書いているので、すごく恥ずかしいです。(〃∇〃) てれっ☆

腕をつかまれて暗い廊下へ引き出された。暖房の効いた部屋と違って廊下の空気はひんやりと冷たかった。何をするつもりなんだろう。不安な気持ちで見ていると、秋月さんは廊下に並んだ縦長の窓のひとつを鍵を開けた。そして右側を20センチほど開ける。そして左側も・・・。そこには、泥棒よけの面格子が、はまっているのだ。彼は、その格子のに行儀よく並んだ鉄の棒が、その上に3センチ程突き出ているところに、ひょいと縄をかけた、そこに自在結びをつくると私の方を見て薄く笑う。
「手を・・・。」
 そこに縛り付けるつもりなんだ・・・。嘘でしょう?窓を開けたままで?その向こう側は、マンションの通路なのよ?いくら夜中だっていつ人が通るかわからないのに。
 私は、思わず後ずさってしまう。
「玲、左手を・・・。」
 嫌。そんな事、絶対に嫌。首を振りながらなおもじりじりと下がる。泣きそうな私の顔を見て、秋川さんはものすごく優しい顔で微笑む。
「おいで。玲。」
 あきらめて、手を、差し出すしかなかった。窓の左側へ左手を、右側へ右手を。もやい結びを使って幾重にも縄をかけまわしていく。縄が何重にもなれば、手首への負担は少なくなって痛みも無い。その代わりに、人が来たからといって、すぐにほどけるものではなくなってしまう。両手を十字架に掛けるように拡げて窓に張り付かされた私の影は、いくらすりガラスだといっても通路側から見れば丸見えに違いなかった。不安と、羞恥が交互に襲ってくる。誰かに見られたら。見られたら。見られたら。
 こんなの。変よ。きっと、通報されちゃう。最後に、自在の縄止めを引くと、今までたるんでいた縄がぴんと張り、私の身体はガラス戸にぴったりと張り付けになってしまう。
「暴れるなよ。格子が外れるぞ。」
 足元に秋川さんがしゃがむ。右足に縄を掛けぐいっと引っ張ると、反対側のドアストッパーへその縄を止めてしまう。反対側は、玄関を開けた時に廊下が置くまで見通せないように作ってある目隠しの飾り格子の足元に結び付けたれた。足が大きく開かれて、まったく無防備なお尻を彼に差し出してしまっていた。掌に当たる冷たい格子にしがみつく、足が振るえ膝の力が抜けて行く。
「しばらくそうしてろ。風呂に入ってくるから。」
 そんな。こんな場所に置いていくつもりなの?誰か来たら、どうすればいいの。私は完全に手足を縛られてどう逃げようも無い形でガラスに押し付けられているのに。秋川さんは、クックッと、笑いながらバスルームのドアを開け、思い出したように、振り返ると手を伸ばして廊下の電気を付けた。私は驚愕した。
「だ、だめ!消して。消してちょうだい!嫌。外から見えちゃう。」
 暗くても、通路を通れば格子に縛り付けられて手やガラスに押し付けられた裸の身体の影は隠しようが無い。でも、すくなくとも、向こう側のビルからは真っ暗な窓しか見えないはずだ。それが、明かりがついてしまえば十字に貼り付けになった人影が、しっかりと窓に浮かび上がってしまう。
「秋川さん。いや。お願い!消してちょうだい。」
「大きな声を立てるな。窓が開いてるんだから、外に筒抜けだぞ。」
 はっと、口をつぐんだ時には、彼はもうバスルームの中に消えていた。脱衣場のドアもすでに閉まっている。ひどい。私は取り残された不安に身もだえするような思いだった。
 今の時間帯だったら、反対側のマンションや背の高いビルの窓がどれくらい明かりがついてるのかを、思い出そうとする。この通路は北側を向いている。当然向こうは南側だ。カーテンが開いていれば、この通路は丸見えだろう。ビルはもうほとんど電気が消えているはずだ。オフィスがほとんどなのだから。でも、マンションは?みんなきっと寝ている。寝ているはずだ。起きていてもカーテンは閉めているだろう。向こうから見えるって事はこっちからも見えるんだから。こんな時間にはベランダに出る人もいないはず。でも、でも、家の中ではタバコを吸うことを許されない夫が時々ベランダに出てタバコを吸っている風景は見慣れていた。もう、みんな寝ている。寝ているはずだ。私は腕を引いてみた。幾重にも廻された縄は、びくともしない。どうしよう。どうしよう。どうしよう。ああ・・・。

 どうしようもなかった。彼が早く風呂から出てきてくれるのを祈るしかなかった。お願い。お願い。早く。廊下につながれたこともだったが、そばに誰もいないことが、一層の不安を掻き立てる。
その時ピンとエレベーターが上がって来てドアが開く時の音が響いた。誰か・・・上がって・・来てる。恐怖が心臓を締め上げる。

 コツ、コツ、コツ、コツ。

通路のコンクリートの上を歩く革靴の音がする。近づいてくる人の気配。私は息をすることもできない。身体を固くして。額をガラスに押し付けながら祈る。気が付かないで。お願いだから。気が付かないで。ああ。だけど、そんな事望むべくも無い。こうこうと明かりに照らされた私の身体のシルエットはしっかりと窓に浮かび上がってるだろう。少し開かれた窓から突き出した縛られた腕は、中で何が行われてるか一目瞭然だ。相手がやろうと思えば、ガラス戸をもっと開いて私の顔や身体を見る事だって・・。しかも。しかも、それは近所の顔見知りの誰かかもしれないのだ。いや、その確立の方がずっと高い。干上がった喉の奥が鳴って、思いのほか大きな音に聞こえた。私は溜まらず歯を喰いしばる。舌が緊張して乾いた喉にはりついているようだった。もう、立っているのがやっとだ。頼るのは握りこんだ格子の固さだけだというように必死でしがみつく。
 その時、ひとつ手前の部屋の前で立ち止まった靴の主が、ガチャガチャと鍵を開ける音がした。スチールのドアが開いて、閉じられる大きな音。

 ・・・・・助かった。神様。

「おしかったな。」
 秋川さんの声にはっと振り返った。不自由な身体で首を捻り、相手の姿を確かめようとした。でも、よく見ることができない。パチンと電気が消され。彼が、近づいてくる気配を身体で感じる。
 彼が後ろから身体に腕を廻して熱い身体を寄せてきた。バスローブの前は開かれて、彼の剥き出しの腹が私の背中に重なる。それだけで、私の心臓は跳ね上がる。首筋に顔を埋めて歯をたてた。耳に熱い息をそっと私の尻を撫で回した。さわるかさわらないかの微妙なタッチ・・・。私は、目をギュッと瞑って、火照った頬をガラスに押し付ける。ああ。本当に彼はこのままするつもりなんだ。私は恐怖と羞恥の入り混じった甘美な興奮をおののきながら味わっていた。


Category: 物語
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Comments

to コルソ大佐

 そんな難しい言葉で言われるとドキドキしてしまいます。
玲は、秋川さんが好きって、事よね。きっと。
ウーン (Θ_Θ;)
でも、まだ苗字で読んでるとここが微妙・・・。

さやか#SbGCGV9. | URL | [編集]
2006/05/31(水) 00:42:33

拒絶と受動に関する微分方程式の成立根拠?

いきなり訳のわからないデ出しであれなのですが、参考にしていただき、そして我が武ログを紹介していただき感謝しております。

最後の段落における愛撫の様子にて
玲嬢の拒絶するも秋川氏の求めるものを受け入れている様に身悶えしております。

何人も立ち入ることの
許されぬ聖域が瞬時に成立しているかのようにさえ見えます。

これからのご活躍、新作を期待して
おります。

こるそ大佐#9P3EZdNY | URL | [編集]
2006/05/30(火) 19:42:27

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