2012
アニスタ神殿記

資料館繋がりで、仲良くなった三和出版の雑誌に小説やコラム書いてらっしゃる作家佐伯香也子先生が、今回、雑誌に掲載されていた長編を私家本という形で、本にされました。全編、拷問に継ぐ拷問で、よくもまあこんなにいろんな責めを思いつくものだと
物語は、天空に浮かぶ巨大な島であるアニスタを守り支えている、三十三人の神人たち。しかしその神人がアニスタを守るためには、美しき乙女である神殿女の、苦痛と絶望と屈辱と羞恥が産みだす苦しみが必要だったのである・・・・・。
ちょっと長いのですが、主人公が初めて、神人に責められるシーンを引用させて頂きます。
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奉仕のための部屋は、頑丈な鉄扉と石壁できた、窓が一つもない場所だった。
天井からは鎖や鉄輪が下がり、ほかにもイレナが見た事のない、奇妙でおそろしい形をした道具があちこちに置いてある。
ゼルラウスはもう先に来ていて、イレナを見ると、わずかに眉をあげた。
「なんだ。だいぶサトラを手こずらせるのではないか思ったが、そうでもなかったようだな」
ゼルラウスの言葉に、サトラは、
「まれに見る勇気をお持ちです。このような気高い方には、お会いした事がございません」
そういって頭を下げると、静かに出て行った。
ゼルラウスは笑い出した。
「サトラのあんな褒め言葉は、初めて聞いたぞ」
そういって、イレナに近づいてくると、その髪をつかんで顔を仰向かせた。
「どれ、その気高い魂を、じっくりと味わわせてもらおうか」
いきなり、唇が合わせられた。何かが、イレナの中から吸い取られてゆく。苦しくなって眉をよせると、体が軽くなって天地が逆転した。
気がつくと、ゼルラウスがイレナの足をつかんで逆さ吊りにしていた。
そのまま足を開いた形で、足首ベルトのリングを、天井からさがった鉤にひっかけられる。ぶらりと下がっていた腕は、うしろでひとまとめに○束された。
イレナは、もうそれだけで息苦しいほどの恐怖にさいなまれた。覚悟を決めたとはいえ、未知の苦痛に対して平静でいられるわけがない。
ゼルラウスは、そんなイレナの恐怖をあおるように、彼女のからだのまわりをゆっくり回ると、先が何本にも分かれたバラ鞭を手に取り、さかさまになったイレナの胸を軽くなぶった。
「ああっ」
思わず声がこぼれる。鞭はたわむれるように、なんども胸の先に触れては離れた。
次になにをされるのか。イレナの胸の鼓動がいっそう早くなって、頭がくらくらする。 ゼルラウスは、その心の動きを感じ取って目を細め、
「いいぞ」
そう、ひとこと言ったかと思うと、いきなりイレナの胸に鞭を振り下ろした。
「ああーっ!」
思った以上の痛みが体を走り、しばらくは声もでない。生まれてからまだ一度も、こんなにひどくぶたれたことはなかった。
だが、鞭は何度も何度もふりおろされ、それは○束具からはみ出した乳房が赤くすりむけるまで続けられた。
そして、その次は足の間だった。
まだ、なんの快楽も知らないイレナの花芯が、容赦なく打ちすえられる。そこは恥ずかしい場所であると同時に、一番弱い場所でもあった。
胸の痛みで涙がにじんでいたイレナは、悲鳴をあげながら、なんとかのがれようと腰をゆらした。だが、そんな程度で避けられるものではない。
根元で打たれるとドスン重い衝撃があり、骨にまでひびく。先の方でパシリと打たれると、粘膜を裂かれるような鋭い痛みが走った。ゼルラウスは、処女地を鞭で耕すかのように、念入りに打ち続けた。
イレナは逆さになったまま涙を流し、許しを乞いそうになる自分を必死でおさえなければならなかった。ようやく終った時には、花びら全体が赤く腫れ上がり、すっかり痛みにしびれてしまっていた。
ゼルラウスは、次に太い一本鞭を選ぶと、イレナのうしろへまわってまろやかな双丘を打ち始めた。バラ鞭よりずっと鋭どい激痛に、イレナはいっそう大きく叫んだ。どんな覚悟があっても、こんな痛みにはたえられそうもなかった。
だが、それでも耐えなければならない。
イレナは、くじけそうになる自分を立て直すために、奥歯をかみしめ、悲鳴を封じた。
やがて、双丘は赤から紫にかわり、ところどころ皮膚がやぶれて血がにじみだしてきた。
ゼルラウスは三たび鞭をかえると、今度は鋲のついたパドルをもってきた。そしてその鋲が傷にめりこむように、はでな音を立てて打ちおろした。
イレナの口から、ついに限界をこえる濁った悲鳴があがった。ゼルラウスは、十回ほど強く打ってさらに出血させると、逆さになっているイレナの頭を持ち上げた。
「尻の傷は、治療しないように命じておく。これから毎日お前の尻を打って、傷の治る間がないようにしてやろう」
イレナは、弱い悲鳴とともに涙をあふれさせた。ゼルラウスは、また目を細めると言った。
「たしかに、お前の魂は特別だ。ここまで純粋で力強い気は、めったにない。今夜は、存分に楽しませてもらうぞ」
言い終ると、彼はイレナを鉤からおろし、背もたれと座面全体にトゲのついた椅子に座らせた。
「ああああっ!」
イレナが大きな悲鳴をあげる間に、腕が肘掛けに固定され、足は広げられてその腕の上にかけられる。これで体重のほとんどが、引き裂かれた双丘へかかることになった。
自分の膝の下から手がのぞいているような姿勢はとて不自由で、傷にめりこむ棘の痛みは耐えがたいほど彼女を苦しめていた。
ゼルラウスは、そんな彼女の性器を指で広げると、中になにかさし入れた。
「ゴラルの餌だ。やつはこれを食べて溶かして、また外へ出してくれる」
そういっているうちに、なかからトロリとしたあたたかなものがあふれてきた。
そのおぞましさと羞恥に、イレナは「イヤー!」といって首をふる。
ゼルラウスはちょっと笑うと、自分の指を三本イレナにさしこんだ。そして狭い管を広げるように動かした。
さっきさんざん打たれた場所だけに、少しの刺激も大きく響く。イレナにとってそこを広げられるのは、とてもつらいことだった。だが、なんども抜き差しをくりかえされるうちに、痛みだけではない何かが体の奥からこみあげてきて、イレナは驚いた。
(こんなのは間違っている! 神殿女としてふさわしくない!)
彼女は自分を恥じた。清らかな神殿女となるべく育てられてきたイレナにとって、性の快楽は罪悪に等しいものだったのである。
ゼルラウスは、イレナの羞恥を見て指をちょっと動かした。すると、突然イレナの体内に激痛が走った。
「キャーっ!」
それはすぐに収まったが、またゼルラウスが指を動かすと同じ激痛がやってくる。
おそろしい椅子の痛みと体内の痛みで、イレナは息も絶え絶えになった。
「神人は、別に手を触れなくても、おまえたちに痛みを与える事はできる。だが、道具を使ったり獣人に責めさせることで、心のもろい人間の恐怖は何倍にもなる。めんどうだが、そうすることでずっとうまい気を得ることができるのだ」
ゼルラウスはそういって指を引き抜くと、金属の筒のようなものを持ってきた。
「お前のそこは、まだ狭い。訓練のしがいがあるな」
彼はそういうと、持ってきた筒をイレナの体内に挿入した。冷たく固い感触に、イレナが眉をよせる。それには手元にネジがついていて、ゼルラウスがそれをまわすと、イレナの中が広がりはじめた。
「あ、ああ!」
イレナの声は、次第に切羽つまったものになった。
やがて、おなかが苦しくなるほど筒は太くなり、これ以上広がれば中が裂けるという処まで来た。
恐怖に、イレナの全身がこわばる。
だが、ゼルラウスの手は止まらなかった。
「いや! ああ、ああああーっ!」
彼女が頭をふって絶叫した瞬間、ついに中から真っ赤な血があふれ出した。
ゼルラウスは血の中からヌルリと筒を引き抜くと、かわりに自分の手をさし入れた。先ほどは指三本がやっとだったのに、裂かれたそこは、彼の手首まで楽にのみこんだ。
しかし、イレナは「楽」どころではなかった。そこから、体全体が大きく裂けてゆきそうな幻想がわきあがり、彼女をいっそうの激痛と恐怖で満たした。それは、あれほどつらかった椅子の痛みさえも、忘れさせるものだった。
ゼルラウスは鼻歌でも歌いだしそうな様子で、イレナの体に入れた手首を前後させはじめた。
イレナは、その苦痛にもがき叫んだ。最初はバタつかせていた足も、やがて、あまりの痛みにピンと伸びて細かく痙攣しはじめた。
ゼルラウスは、左右に大きくゆらしたり、斜めにねじこんだりして長い間生け贄の反応を楽しんでいたが、最後に激しく手首を動かすと、ついにイレナを失神させた。
次にイレナが目を覚ましてみると、今度は手足を背中で一つにまとめられ、体を弓なりにそらせた状態で、荷物のように吊られていた。○束具はぬがされていたが、腰は恐ろしいほど曲がり、吊られているだけで全身に痛みがある。
うめいていると、ゼルラウスがまた何かを持ってきた。彼の手のひらに乗っていたのは、鶏卵ほどの大きさの甲虫だった。楕円形のずんぐりした胴体に、六本の頑丈な足と、丸い頭がついている。
何をされるのかと、イレナはまた身をすくませ、息をふるわせた。
ゼルラウスは甲虫を一匹つまむと、彼女の反応を楽しむように説明した。
「このアギラは丈夫な歯をもっていて、何かに喰いつくと、だんだん体が重くなってくるという変わった性質をもっている。見た目は小さいが、最後は岩よりも重くなる。これを、今夜最後の贈り物にしてやろう」
ゼルラウスはニヤリと笑うと、アギラの横腹をちょっと押した。すると丸い頭部が突然大きく広がり、鋭い歯が環状に並ぶ口が現れた。頭と見えたのは、そのすべてが口だったのだ。
ゼルラウスは、息をのむイレナの胸の果実に、無造作に一匹喰いつかせた。がっちりと食い込んでくる歯の痛みと話のおそろしさで、イレナは狂ったように悲鳴をあげる。
ゼルラウスは、そのイレナの発する気を深く味わうかのようにしばらくじっとしていたが、二匹目も残りの果実に喰いつかせた。
イレナは、ノドが裂けるのではないかと思うほど叫び続けた。
ゼルラウスの説明どおり、アギラは次第に重くなり、吊られたイレナの乳房が下へむかって円錐形に伸びはじめた。
喰いついた時間に少し差があるので、伸び方がいびつになる。体中の痛みが胸の一点にかかりはじめ、イレナの全身から恐怖と苦痛の汗が噴き出した。
その想像を絶する時間は、どのくらい続いたのだろう。
苦しむ彼女の瞳が、一瞬大きく見開かれたかと思うと、とうとう魂切る絶叫がほとばしった。そして、左の胸から重くなったアギラがごとりと落ちた。
再び気を失ったイレナの胸の果実は無惨にも喰いちぎられ、アギラは、その血のしたたりをよけるように、のそのそと歩き出した。
アニスタ神殿記より 佐伯香也子著
人の数だけ生き方があり、生きるための目的がある。そしてSMの形も・・・・。神人でありゼルラウスにも。神殿女であるイレナにも。自分の信じる道を、自分の望む道を辿るしかない。
イレナは、最後には、いろいろな理由から、我と我が身を差し出す道を選ぶ。いったい、女性には、すべてを受け入れることができ、相手の行為を許すことができるのか。愛する人のために?それとも逆らえぬ畏怖のために?同胞たちのために?愛の為に。
物語でなければ綴ることの出来ない、残酷に身体を壊し続けられるような拷問が次々と描かれていき、苦しんでも、苦しんでも、すぐに身体は不思議な力によって回復し、また、新しい責めが待っている。
終わりのない苦痛の中で女はすべてを受け入れる。そして、新たな花を咲かせるのである。
作者はイレナの行為を『他者の享楽』と述べている。詳しくは、本のあとがきに、その論旨が説明されているので、呼んでいただくとありがたい。与えられるものをすべて受け入れるSMは、この前の記事で私が書いた「拒み続けるM」の表現の対局にあるものと推察する。

この物語は、三和出版から出版された「秘性」第三号から第七号までに連載されていたものを、加筆訂正し、一冊にまとめたものです。風俗資料館で求められます。郵送も受け付けていますので、興味を持たれた方は、どうぞ、読んでみてくださね。

