2011
小妻容子秘画帖
㈱大洋図書
31500円

小妻容子先生が、ふくよかな女性ばかりを描いた「豐艶の濫人」という、秘画帖がございます。大変少ない発行でしたので、ご覧になった方は少ないと思われます。
当時としても、痩せてバランスがいい女性ばかりがもて囃されている状況でしたから、世に出す日はあるまい。その思惑で、ただひたすら自分の楽しみのために描き貯められた名作です。
好きで好きです好きでたまらなくって書き貯めた絵は、時間に囚われず、自分の納得の行くように描き込んだ作品になっています。特にその肌の表現は、ふっくらと柔らかく、それでいて青く、白く、その肌の冷たさを思わせるように描きこまれており、そっと触れたら、陶磁器のようになめらかで冷たい白い肌を披露してくれそうな気がします。
こんなにも、痩せたがっている女性がたくさんいる時代は、嘗て無かったと言っても、過言ではないように思います。女性が思ってるよりも男性はふっくらとした女性が好き。と、言いますが、当の女性は男性の思惑よりも、女性の目を意識しているように思います。そして、女性はなぜか、ほっそりとした美しく鍛えられた伸びやかな身体に憧れています。それは、男性のためではなく、自分自身のため、自分の好きな女性像を実現すべきような気が致します。
それに反してこの秘画帖に集められたのは、すべてが驚くほどの体重を備えています。そして、その質量と、迫力、そしてそれでいて、女性の恥じらいを忘れていない佇まい。そこに確かに怖ろしいような美があるのです。
私達が、普段目にするのは、ガラスで覆われた、先生の飾られた絵です。そこにガラスが一枚あるのとないのとで、作品の迫力や豊かさが損なわれてしまうという事実は、恐るべきものがあります。風俗資料館で、会員の求めによって、ようやく外に出てくるその絵は、しっとりとして静かな佇まいの中に、孤高の諦めと、哀しさを滲ませて、立っていました。
最後になりましたが、小妻容子先生のご冥福を心からお祈り申し上げます。
スナイパー
因習の絵画表現
