2009

06.16

魔道士の掟



「真実の剣」シリーズ第1部 (ハヤカワ文庫FT)
 テリー グッドカインド著

 「真実の剣」をさずけられ、「探究者」に任命されたリチャードは、人々を救うため、父の復讐のため、あくの魔王ラールを破滅させるために、旅を始める・・・。

 健全な戦うファンタジーのヒーローであるリチャードくんの物語なのですが、どういう訳か、設定はめちゃ妖しい物が多いのです。ノーマルな人が読んでても、気がつかないような展開なんだけど…、これ、いいのか、と思うほどにサディズムがいっぱい。あまりエロくないのが難点ですけど。w
 これって多分、リチャードくんのキャラのせいだよね。w
 ちなみにアジエルって言うのは、モルドシスの使う拷問用の道具で、魔法の棒です。触れるだけで相手に恐ろしい痛みを与え、血を流させ、火傷をさせ、殺すこともできます。


「でもどうして今、アジエルを使わなければならないんです。」
 ディーナは笑った。「それはおまえに学んでほしいからよ。わたしにはやりたいことは何でもできて、それを止める術はおまえにはないということをね。おまえはまったく無力で、わずかでも苦痛の無い時間を楽しむ事ができるのは、わたしがそうすることを選んだときだけだということを、学ばなければならないわ。おまえ自身が選んだのではなくね」
 
 手首の鎖でぶら下がったリチャードは、なんとか恐怖を抑えようとした。自分の体重で鉄の帯が手首に食いこんだ。彼女を止める術がないことはもうわかっていたが、これはまた別だった。無力感が増幅され、反撃する術はないということが、いっそうひしひしと感じられた。
 ディーナが手袋をはめ、アジエルで手のひらを軽く叩いて彼の不安を長引かせながら、何度か周囲をまわった。

 アジエルに触られているのがどんなものかはわかっていた。もうこれ以上教えてもらう必要はない。彼女はただ、彼のプライドを、自尊心を奪い去るためにこんなことをしているのだ。彼を征服するために。
 ディーナはまわりを歩きつづけながら、アジエルで何度か軽く彼の胸を叩いた。触れるたびに、それは短剣で刺されるような痛みをもたらした。そのたびにリチャードは苦痛に悲鳴をあげ、鎖にぶらさがったまま、身をよじった。それでもまだ、はじまってさえいないのだ。初日はまだ終わっておらず、これからさらに多くの責めクが襲うだろう。彼は自分の無力さに涙を流した。

 ときにディーナは彼の後ろに立ち、警戒がゆるむのを待って触れた。それに飽きると彼にめをつぶらせたまま、それを押し付けたり、胸の上を引きずったりしながら歩きまわった。
 うまくフェイントをかけて彼に痛みがくると思わせ、身構えさせる事に成功すると、ディーナは声をあげて笑った。一度、特別鋭い突きに彼が思わず目を開けると、彼女は、それを口実に手袋をつかった。そして、命じられていないのに目を開いた事に、許しを請わせた。手枷が食いこんだ手首からは、血がながれていた。手枷に体重をかけないよう背のびを続けるのは不可能だった。

 ディーナが彼女自身についていったことは正しかった。彼女は自分のしている事に決して疲れも、飽きもしなかった。絶えず魅了され、楽しみ、満足感を味わいつづけているようだった。リチャードを痛めつけているとき以上に彼女が幸せそうに見えるのは、彼がやめてくれと懇願するときだけだった。リチャードはできるものならもっと懇願して、彼女を幸せにしていただろうが、口をきくことがほとんどできなかった。呼吸をすることさえ手に余るような状態だったのだ。


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    2009

06.05

狭間に・・・12

狭間に・・・1から読む



 途端に、身体の中で蠢いていた手が、するりと抜け出て、風が動いたかと思うと、尻たぼに、大きな手が打ちつけられた。
 派手な肉を打つ音が部屋に響き渡った。彼が私の尻を掌で打ったのだった。じんじんと痺れる痛みが、その場所に広がった。多分赤くなっているはず。掌の形に浮き出た赤さが、監視カメラの中に、写りこんでいるだろう。痛みが私を鋭く引き裂き、私は息をするのも困難な状態で、喘いだ。

 続けさまに掌が打ちつけられた。痛みが襲いかかり、私は仰け反った。腹を椅子に打ちつけて、もがき、身体を捻じった。一打毎に、痛みが強くなり、なんとかして、打たれる場所を変えようともがく。身体を丸め、次には逸らし、跳ねては、しがみつく。

「ひいっ!」

 我慢しようとしても、口を出る叫びを押し殺せなかった。

「いたっ・・・!痛いっ。」

 憧れていた。縛られてお尻を叩かれたいと。自分のコントロールの外の苦痛。彼の膝の上で痛みに泣きたいと。だが、彼がくれる痛みは予想以上で、耐えがたかった。容赦ない打撃の下で、私は泣き叫んだ。

「やめて。痛いっ、いたあああいい。」

「いやあ!許して。お願い。もう、許して。」

 何打ぐらい叩かれたのか、数えられないほどに、叫んだ。汗びっしょりになった身体を弾ませて、許しを請うて、泣き声をあげて。それが、来た時は、驚きの方が先だった。痛みが、変質していく事に。
 私は声を上げるのを歯を食いしばって押し殺した。心を澄まして、それを見つけようと、掴もうとした。膨れ上がってくる物が、痛みを押しやり、熱くなった身体に、満ちてくる物を見つめた。抑えきれなかった、かすれた悲鳴が消えていくのと入れ違いに襲ってくる波。満ちて来る。うねり。

 私は、それを見つけられるのだろうか。

 大丈夫。俺が・・・。

 教えてあげるから・・・・。

 世界は遠ざかり。私は空白の海に漂い出たのだった。




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    2009

06.04

狭間に・・・11

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 押し殺す必要が無くなった喘ぎに、息を弾ませながら、私はもがいた。

「もう、終わり。もう、もう、終わり。」
「どうして?」

 彼の手は、さっきよりもゆっくりと、けれど充血して、より感じる場所を深くえぐり続けた。

「だって、もう、逝っちゃったの。もう、逝っちゃったの。だから、もうおしまい。」
「もう一度逝けるよ。何度でもね。」
「いや、もう、いや・・・。」

 私の声には鳴き声が混じり始めていた。

「見られちゃった。見られちゃった。知らない人に。」
「うん」
「嫌って言ったのに、言ったのに・・・。」
「うん」

 手が、ゆっくりと、中から出て行くと、花びらを押し広げ肉目を剥きだした。触れるか触れないかの微妙な距離で、円を描き続ける。快感は、深く、私をしっかりと掴んで膨らみ続けて行く。私は、自分の身体が、滑り落ちて行かないように、必死で椅子にしがみつく。

「考えたことがある?」

 彼の人差し指が皮を剥き、緩く添えられた親指が円を描く、中指と薬指は全く別の生き物のように動き、中に深く入り込んでくる。私は、首を振り続け、彼の指さきで踊った。

「カラオケボックスって、監視カメラが付いているんだよね」

え?薄いピンク色の靄の中、私の肉はひくひくと痙攣した。

「多分、さっきの店員が、戻って行って・・同僚に言うだろうね」

「この部屋で何が起きているか」

「手の空いたものは、替わりばんこにカメラを覗きこむ。君が椅子に縛られて、身動きのならない身体を、僕にまさぐられている様を観るためにスカートをめくりあげられて、何もかも晒しているところを。」

「カメラの位置がどこだか知っているかい?」

「君のお尻の後ろの方だ」

「きっと何もかも丸見えに映っているよ」

「録画されているフィルムの上にも」

「君の、痴態が焼き付けられている」

「受付に居た、あの若い女性も、きっと、それを見ているね。」

 恥ずかしいって事が、身動きがならないという事が、逃れられないって事が、こんなにも快感を強くするなんて思っていなかった。 
 思っていたけれど、ほんとに知ってはいなかった。彼の言葉の一つ一つが、私の、心を揺さぶり、身体の中を、恥ずかしさが荒れ狂う。優しい愛撫がもどかしい。私は、泣きながら、しゃくりあげながら、揺れた。


続く
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    2009

06.03

狭間に・・・10

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 店員の上ずった声に、部屋の中で起きている事に動揺しているのが分かる。引きずるような靴の音が、テーブルの上にコップを置く音が、耳の中で反響した。それでも、彼の椅子の上の身体が、私の一番隠しておきたい場所を、店員の視線から遮ってくれているはずだ。何もかも、何もかもは見えていないはず・・・。
 その時彼の手が、私の中に入って来た。

 ぬちゃ・・・。

 濡れそぼり、充血し、男の手を待ち望んでいる身体がたてる音が、部屋に響き渡った。

 店員が、テーブルの上に飲み物を置いてそのまま固まっている気配がする。私は眼を閉じて祈った。お願い。早く出てって。見ないで。見ないで。出て行って。突き上げてくる物が私に、無意識に首を振らせた。髪の毛が揺れる。
 私の中の彼の手が、ゆっくりと蠢いた。壁をこするように中へ入って来る、そして、2本に増え。開き。またゆっくりと出て行く。と、思う間もなくもう一度中へ。

 音が響く。濡れた音。性器が立てる音が。

 テーブル越しに覗きこまれているのが分かっていて、どうしようもなかった。
 店員に、尻の間から、彼の手が出たり入ったりしているのが見えているだろう。ひくひくと体が反応し、肉が痙攣し、ぴちゃぴちゃと、淫猥な音を立てる身体が、蠢いているのが。部屋中に充満する女の匂いが。首を振るのをやめる事が出来なかった。声をたてまいと、唇を噛みしめて、吹き荒れる快感が沸き上がって来るのをを閉じ込めようとした。

 出ないで、外に。助けて。

 止まっているかのようにゆっくりと時間が流れ、店員が、スローモーションのように動き、部屋を出て、ドアがしまる音がするまで、どれくらいの時間があったのか分からない。不自然なほどにそれは長く、私は何度も何度も浮き上がり、うねりに飲み込まれそうになっては自分を引き戻した。
 ドアが閉まった瞬間に、私は叫び声を上げていた。

「いやあっ!」

 そして、逝ってしまった。耐えきれずに。



続く
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    2009

06.02

狭間に・・・9

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 立ちあがって、彼が、電話の所へ行ったのが分かった。受話器を取り、電話機に向かって、オーダーを告げる。それが意味している事を、私は、知って、仰天した。どこかで高をくくっていたのかもしれない。そこまではしないだろうと思っていたのかもしれない。それは、もしかして咎められたりするんじゃないだろうか・・と、いう予感が、彼は、そこまでしないだろうという予想に結びついていた。
 冷や汗が、どっと噴き出して、私は、逃れようと腕を引っ張った。縄がきしむギシギシいう音と、椅子が鳴る音が、部屋に充満する。黙って、抵抗する私を、彼は、止めなかった。椅子に戻ってきて座り、私が、必死に、縄から腕を抜こうとするのを、ただ、黙って見つめた。

 ああ、どうしよう。来ちゃう。もう、来ちゃう。そしたら、見られてしまう。私が椅子に縛りつけられているところを。こんな場所でなにをしているのかと思われる。いや、何をしているのかなんて見れば分かりきっている。ぎしぎしぎしぎし・・・。どうやっても、身体は自由にならなかった。

「やだ。ほどいて、見せるのは嫌。」

「うん。」

 彼の手が、また、お尻の上に乗せられた。もう、薄いスカート一枚しか覆うもののないお尻の上に、再び彼のぬくもりが広がる。それから彼の手がスカートの下へ潜り込んできて、広げられた足の間を撫で上げた。

「ひぃやっ!」

 口を閉じる暇もなく、私は叫んでいた。不意打ちに走った快感に、猫のように身体を丸めて、それを耐えた。それからじわじわと、這いまわる手が与える物を歯を喰いしばってやりすごそうとした。さっきよりも、強い快感が、身体の中から、その手の動きに答えようと広がって来る。この状況で。こんなに焦っているのに。

 彼が、もう一度スカートをめくりあげた。

「いやああああああ・・・・!」

 さらされた尻に、脚の間に、空調の風が吹きつけて来る。

「や・・・。お願い。それは、いや。スカートを降ろして。お願い。いや・・」

「うん」

 彼は、まったく頓着せず、下着をつけていた時の行為をもう一度繰り返し始めた。だが、あの時に肌をガードしていてくれた布地はもうない。直に触れてくる繊細な指の動きが、私の身体に嵐を呼び覚ます。あまりの気持ちよさに、私は、ただ、身体を固くしているしかなかった。

 ガチャと、ドアが開く。私は、ギュッと目を閉じた。目を瞑っていれば、起きた事を無かった事にできるかのように。石のように硬くなって、何も感じないで、何も見ないで、何も知らないふりをしようとした。

「お飲み物をお持ちしました。」



続く

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