ネットでさえ 主の文字だけ 胸に染み入る

「ネット調 教」について、私は懐疑的でした。SとMの間を行ったり来たりしている私は、M側の都合を考えたり、S側の勝手な希望を考えたり、ネットだけで相手を支配する事の可能性や不完全さを考えたりして「やっぱり無理っ!」とか、思ったりしていました。
何しろ、好みが「痛い」の好き・・・なので、手の込んだ「言葉責め」とか、「快楽系」とか、「露出系」とか、よく分からんちんなのであります。
で、痛いのが好きなMが暴走したら、ネットでは止めようがありません。それでは、支配した事にならないじゃないか・・・とか、まあ、しょうもない事を考えてウロウロウロウロ・・・・。
それで、ずーーーーーーーーっと、このお題の所で止まっていました。「歌留多が完成するのは一体いつのことだろう。」とか、思いながら・・・「ね」のつく、他の言葉を探してみたりして・・・。
ところが、ひょんなところから、ある人に相談してみたところ「プロット」を、いただいたのです。ネット調 教の物語の。(笑)だから、ひょいひょいひょいと、短編を書いて、で、やっつけ仕事で次の「ゐ」へ、行こうと思ったんですが・・・。orz
思ったよりも長い話しになりそうだ。orz
これ書いてたら、いつまでたっても、普段の更新もままならないっ!?・・・・と、言う、手前勝手な都合で((゜-゜;)ヾ(-_-;) オイオイ...)ここは、予告編だけに・・・。
せっせと書いて、ぼちぼちと、アップすしていく事にしましたので、またまた、のんびりとお付き合いくださいませ。m( __ __ )m
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自分がMだとどうして思いこんでしまったのだろう・・・。そんな事を不思議に思ったのは、5番目の男性と別れた時だった。
最初に付き合ったひとが「ちょっと縛ってみない?」と言って、手首を握ってきた時、なんだかどきどきした。その時のセックスが結構よかった。バイブを使われた時に、とっても悪い事をしているような気がしたそのせいで一層感じてると思った。後ろめたくて、刺激的で、すごく違う世界に入り込んだように。
二番目に付き合ったひとと、相性がよくなかったのも原因の一つだ。大好きだったのに、何をしてもうまくいかず、ちっとも感じなかった。よかったのは、抱き寄せられるその手前まで。ピストンされて揺さぶられて、ぽっかりと醒めている私の上で、大仰に自分だけ感じて逝ってしまう人。
1+1=2
だから、私はMなんだって思った。一人になった淋しさも手伝って、ネットでSMの相手を探した。深い海の中に潜って行く時間を経て、私は3番目の男を「主」に持った。朝と、昼と、帰宅の電車の中と、お風呂の脱衣場からメールをしてくれる人。
既婚者だった。
普通に知り合った恋人には無かった優しさに魅かれた。大人の余裕にも憧れた。何より私だけの主。大っぴらに手をつないでは歩けないけれど、いつも私の事を思ってくれる人。
私の時間はその人でいっぱいになった。そして、何度か逢瀬を重ねた。ひざまずいて懇願し、縛られたり、焦らされたり、あれこれ恥ずかしい事を、言ったり、言われたり。
4番目、5番目と相手を変えた後に気がついた。私だけの主人だと思い込んだ、あれほど好きだった相手が、すでに、面影もおぼろになっている事に。私は、ほんとはMじゃなかったのかもしれない。
カチャカチャとキーを叩きながら、私はそのSMチャットの中で、退屈な時間をやりすごそうとしていた。ポンっと、画面の色が変わり、待っていた人が来る。ここの所、同じ時間帯に、一緒の時間を過ごした人。一つ一つの言葉が浮かび上がり、ゆっくりと流れるテンポを好きになった。相手の言葉を待っている時間のせいで、不思議に心が惹きつけられて行く。
6番目の相手に・・・って、積極的に思ってた訳じゃない。仕事が忙しくて、リアルの出会いを探す時間も無く、外にいれば慌ただしく、家に帰れば疲れのせいなのか、何もかもはっきりとしないぼんやりとした毎日に、ちょっと彩りを添えたかっただけだった。
「蓮さんって、調 教にどんなイメージを抱いているの?」
「そうねぇ・・」
私は画面を見つめる。
「ゆみかさん、あなたはどう思ってるの?」
「相手を自分の型にはめて行く事かしら。手順を踏んで、SMを受け入れさせていくように」
もしかしたら、彼は、まだ、あまり経験がないのかもしれない。
何人かの人間が絡んでくるために、雑談の中らから、相手の本音を知るはなかなか難しい。でも、ほんとの所、内容はどうでもよかった。彼が紡ぎだす、言葉が刻む不思議なリズムに、私は酔っていたのだ。ピアノのペダルを使って、音を長く響かせているような・・・そんな感じ。
そして、その空間に流れる響きを遮るような、他の人の言葉に、私は少しイライラしていた。
「ねぇ、蓮さん。もし、よろしかったら、私とメッセンジャーをしていただけませんか?」
話題の切れ目の唐突な申し出に、チャットにいた全員が黙ってしまったのが分かった。女性から、それも、Mである私の方から誘った事に、不快さを感じた人もいたのかもしれない。あ、しまった。と、思った時は、リターンキーを押してしまっていて、もう、取り消しようが無い言葉は、パソコンのディスプレイに現れていた。
「私は、あまり、パソコンが得意じゃないんですよ」
蓮さんの文字が、画面に現れる。ただの文字なのに、彼が苦笑しているような気がした。
「メッセンジャーとは、どんなものなんですか?」
その言葉を、好意的な返事と解釈したのは、思い込みだったのだろうか?私は、まるで、手を上げた事で先生にあてられて、皆の前で初めて発表する子供のように舞いあがり、震える手で、次の文字を打ち込んでいた。
「じゃあ、別の部屋へ行きませんか。説明しますから」
待っているだけでなく、大胆に主導権を取る自分にちょっとびっくりしながらも、私は少し、うきうきしていた。すでに、リアルの経験のある私は、不思議そうにSMについて、私に質問しながらも、ゆったりと何でも受け入れてくれそうな相手に、自分が立派な下僕である事をひけらかしてみたかったのかもしれない。
続く・・・