2008
お仕置き・60
琴音・8(第二部・義母)を先に読む
琴音・16(第三部・義父)を先に読む
琴音・20(第四部・お披露目)を先に読む
★琴音・27★
智也の手が着物の裾に掛かり、冷たい綸子の布が肌の上をするすると滑っていく。火照って赤くなった尻が夫の前に現れる。見ているのは夫だけだ。だから、大丈夫。だから、耐えられる。
なにが、大丈夫だったんだろう?何を耐えればいいんだろう?
熱く、気のせいか、自分でも一回り膨れ上がったと思われる肌に、冷たいパドルの表面が押しあてられる。ぴたぴたと予告するかのように。前を向いているのに、視線を動かした訳でもないのに、真後ろにいる、夫が自分の尻にパドルを押しあててる様が視界の端に見えたような気がした。
ゆっくりと振りかぶり、振り下ろす様が。そのパドルの動きが。肌に近づいてくるその軌跡が・・・・。
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バッチィイイイイイィン!!
痛みが、炸裂した瞬間に、琴音はいつものようにひゅうっと、息を吸い込んだ。身体が前のめりになり、ギュッと瞑った瞼の裏に、赤い火花が飛ぶ。吸い込むために開けた口から吐きだされる息とともに、悲鳴が、零れおちて行く。止めようがなく、抑えようもない。
痛みが、身体全体に拡がって行く間、琴音は手をついた台の縁を握りしめる事しか出来なかった。
「ひとおおっつ」
数える智也の声だけが、今の琴音にとってただ一つの拠りどころだった。
ぶれる視界に、自分を見つめている人たちの歓喜を隠しきれない表情が飛ぶように流れるのが映った。どれほどの言い訳をしようとも、愛や、しきたりの言葉で覆い隠そうとしても、見世物になっている事実は、消しようがない。欲望を隠そうともしない男たちが、そして憐れむように眉を顰める女たちが、わき上がるサディズムの感情に酔いしれ始めているのが、琴音の、剥きだしになった感覚に喰い込むように感じられる。
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バッシィイイィイイイィン!!
速く、ときにはじらすように遅く。琴音が、その痛みを充分に味わえるように。また、体勢を立て直す余裕を与えず、思いっきり泣けるように。智也の打擲は、琴音の抵抗を削ぎ落とすように、容赦なく続いた。
琴音の見開かれた瞳から、大粒の涙が溢れ、零れ落ちる。痛みは一打毎に強く、熱く燃え上がるように感じられるのに、恥辱に満ちた世界は段々と琴音の周りから遠ざかって行くようだった。
何もかもが混沌と混じり合い、それでいてクリアに手で掴みとれるような気がしてくる。一打毎に、高ぶっていく、皆の高揚していく残酷さ。その前に差し出されている若妻の痛みに泣き悶えるその姿を、一滴残らずしゃぶりつくそうとする人々の欲望が。
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ああああああぁぁぁ!!!
涙にすっかり濡れて、苦痛に歪み赤くなった打ち振る顔も、段々とはだけてくる胸元も、台の縁を握りしめる白くなった指も。勝手に跳ねる脚も。捻じれる身体も。
楽しんでいる。
私の苦痛を、苦難を、恥辱を、避けられない定めを・・・。
彼らは楽しんでいるのだ。夫も、そして義父も義母も・・・。
琴音の心は、ばらばらになり、痛みの中で、揉みくちゃになった。守っていた自尊心を繋いでいた鎖の輪が、一つ一つ緩み始めていた。
「にゅじゅうううううごっ!」
最後の声を聞いた時、琴音の足はもう彼女の身体を支えてはくれなかった。彼女はずるずると、台の端から滑り落ちた。
続く・・・
